大学生が主人公であることと、医学がテーマになっていることで個人的な好みに期待度が高かった月9『VOICE(ヴォイス)~命なき者の声~』が始まった。
まずキャスト。良い意味で地味でいい。瑛太も生田斗真も比較的普通な感じの好青年である。石原さとみ然り。『ギラギラ』の秀吉役が記憶に新しい佐藤智仁が5人組の中では良いポジション。哲平役の遠藤雄弥とのデコボコ具合がちょうどいい。一話目で5人組の大体の関係性がつかめたので親しみやすいドラマだと感じる。教授には時任三郎、助教に矢田亜希子(彼女はこれが復帰作となる)。医大の法医学ゼミいう少し特殊な環境ではあるものの、大学生が取り巻く青春群像劇としてはオーソドックな展開が期待できる。
本日の第一話で演出として最も残念だったのが瑛太演じる加地大己が閃くシーン。『ガリレオ』の湯川学と同じだ。これはあまりにも安易だ。全体の脚本の流れとしては悪くはなかっただけに興醒めに近い。若者を視聴者として狙っていたとしてもギリギリOUTではないだろうか。僕ならこんな演出はしない。ドラマの中でサスペンス的な要素がスパイスを効かせているのはわかるが、このドラマは若者たちの葛藤や成長を描くほうが入り込みやすい。第一話でも謎めいた死因を突き止めることで彼らは人の心や人生を背負っていたものの尊さを知った。それでいいのだ。余計な演出はいらなかった。本当に残念。
少し話しを脱線させるが、僕は大学のゼミ仲間がいない。非常勤講師にゼミを志願し、特例のような形で指導を受けていたからである。通常の講義枠だけではなく、プライベートで食事をしながらであったり、先生の学会の発表を手伝ったり、師弟の絆というものをそこで得ることができた。しかし、それはやはり教員と生徒という関係性の中での話であり、同じテーマで悩み、意見をぶつけあう仲間はいなかった。
当時、仲の良かった友人らが同じゼミであったことから、僕はその研究室によく出入りしていた。そこにはやはり彼らだけの共通言語があり、彼らにしかわからない葛藤があり、友情があり、目指すべきものがあった。当時はそう感じていなかったかもしれないが僕は多分その関係性に嫉妬をしていたと思う。僕には同じテーマではもちろん、同じ先生についての意見を交わす相手もいなかったからだ。
閑話休題。
だから僕は大学生の群像劇がとても好きなのだ。エネルギーがあり、子供ではない。かといって社会的に認められている存在でもない。このあらゆる意味で限られ、そして守られた期間にしか得られないものがある。それは個々人によって全く異なるが多くは大学の中で起きる。このドラマで5人がゼミという関係性と法医学というテーマにおいて成長していくさまをできるだけ丁寧に描いて欲しいと願う。
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