少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。評価:★★★★☆
舞台は練馬、被害者は7歳の女の子、と自らの環境に近しいことから読み進めるのが苦しい作品だった。自分の子供が被害者になってしまったとき、そして加害者となったとき、親として何ができるのか、何をしなければならないのかを考えされられた。推理小説というよりも社会派小説としての色合いが強い。
加害者が抱える家庭の問題は現代日本ではごく平凡なありえる姿かもしれない。平凡なありえる姿、と書いてしまうとなんとなく大したことがないよう気になるがその本質は極めて重い。モンスターペアレンツと言ってしまえばそうであるかもしれないし、保身的な甘やかしだと言い切ってしまえばそれもまた正しい。親は子を理解できず、子は親を信じない、悲しい事実が次々と不幸を生む過程が本当にどうしようもない。
赤い指のトリック(というかメッセージ)もさることながら、早々と真実を理解していながら自白させるために追い込んでいく様は物語としても秀逸であった。
このシリーズは本作が初めてなのだが、これまでの作品も読みたいと素直に感じた。
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