都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。
評価:★★★★☆
再読シリーズその2。
なんとなく『サヨナライツカ』を読んでいた頃に触れた小説を読みたくなり、しばらくは6~8年前に読んだと思われる作品の再読を進めようと思う。まず手にしたのが吉田修一の『パレード』。
最近の芥川賞作家の中ではもっとも実力がある書き手の一人だと思っている。一般的には芥川賞受賞作である『パーク・ライフ』で知られるところになるのだが、デビュー作である『最後の息子』、そしてこの『パレード』にて実力の高さは認められていた。
本作は都会に住む4人(のちに5人)の若者の物語である。2LDKに男女四人が一緒に暮らしているわけだが、そこに男女間の関係は存在せず、また必要以上にお互いの生活に干渉しない。良くも悪くも今の若者の群像といえるだろう。物語はそれぞれの視点から語られ、五章仕立てになっている。
しかしながら物語の時間軸は受け継がれており、些細なこともそれぞれの問題もきちんと展開を果たしていく。予想外の展開を迎える五章を読むと妙な後味の悪さを覚える。それは解説で川上弘美が言う「こわい小説」ということなのかもしれない。人間のこわさ、必要以上に関わりあわない(干渉しない?)こわさ、とにかく言いようのないざわつきを覚えてしまう。
実のところ、最初に読んだときも面白く読んだはずなのだが、物語りの流れをしっかりと覚えていなかった。五章に入った段階で記憶がよみがえり最後まで一気に読み進めた。今回、きちんと物語を消化できたのは僕が登場人物たちよりも年齢を重ねてしまったせいかもしれない。
普段あまり本を読まない人たちにこそ薦めたい一冊である。
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