今日から公開される映画『誰も守ってくれない』の四ヶ月前を描いた映画連動ドラマ。脚本は映画同様、君塚良一が担当している。主人公勝浦に佐藤浩市、その部下である三島に松田龍平。
大手企業の取締役である尾上(山本圭)が何者かに襲われる事件が発生。暴力団課の勝浦(佐藤浩市)と部下の三島(松田龍平)は被害者家族の警護を命じられる。尾上の娘である令子(木村佳乃)は勝浦のカウンセリングを担当した精神科医であった。尾上は過去に財務省との癒着疑惑があり、そのネタを暴力団に掴まれてゆすられていたのではないか、という線で捜査は進む。
インターネットを通じ、身に覚えのない中傷を受ける令子。その令子のカウンセリングを熱望する男(成宮寛貴)に違和感を覚えた三島は男を尾行し何者かに襲われる。拉致された三島は大量の覚せい剤を投与され、薬物中毒にされ街へ捨てられる。
収容された病院で精神のバランスを崩しかけた三島と対峙する勝浦。勝浦は三年前の事件での失態から心に負い目を感じている(それについては映画で明らかにされているようだ)。薬のせいで三島はバラバラになった家族を守れない勝浦を非難する。勝浦は「俺はお前と話がしたい」と時間をかけて心を開かせていく。
男はすぐに逮捕され、事件は難なく解決する。男は令子の気を引くためにカウンセリングに通い、相手にされないことがわかるとその家族に危害を加えることで令子を傷つけようとしたのだ。そして自分を尾行していた三島にも同様の手段で危害を加える。
その方法は「復讐屋」という携帯裏サイトからの発注であった。警察が追っていた過去の事件とは無関係だったのだ。しかし、本庁は尾上に対する事情徴収を始め結局過去の癒着も明るみに出ることになる。
四ヵ月後、薬物中毒から回復した三島が復帰。再び勝浦とのコンビで仕事を始めたその日、映画の舞台となる事件が幕を開ける。
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以上が概要。映画との連動ドラマであるが見事に映画に行きたくなった。僕自身が単純なせいもあるかもしれないが、刑事ドラマと言うよりはヒューマンドラマである視点が胸に響いた。事件そのものにではなくその家族やマスコミ、そして目に見えないインターネットの情報の渦に巻き込まれていく様がどうしようもなく切ないのだ。
ある物事に対する情報は量が多ければ多いほどその質を精査する必要がある。しかし、普通に生活しているわれわれにとって全ての情報の内容を精査することは不可能であり、結局のところマスコミの声を鵜呑みにしてしまいがちである。ペンは剣よりも強く、人々は単一的なものの見方で物事のよしあしを判断してしまう。真実は悪意や風評によって見えにくくなり、当事者だけではない周囲の人間も深く傷つけれらていく。
劇中、暴力団幹部が勝浦に言う。「あんたら警察が私らを押さえ込むから、若い奴らがのさばるんだ」
わかりやすい不良や暴走族が激減する中、いたって普通に見える子供らが凶行に及ぶ事件が多発している現代。このドラマと映画が伝えようとしていることに、できるだけ多くの良識ある人間が反応すれば少しは世の中が優しくなるかもしれない。ほんの少しだとしても。
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