先週、とある企業のWebサイトリニューアルに関するコンペに参加した。
プレゼンはさまざまな部署から集められた10名程度の審査員に対して行った。事前に充分なオリエンテーションがあり、今回はポイント制の採点方式だと聞かされていた。オリエンテーション時に提示された条件について、それぞれはプレゼンの内容と資料に基づいて加点もしくは減点を行う。その結果、最終的な総合得点が最も高い会社が受注となる。
今朝その結果が届き受注には至らなかった。個人的には自信があったためショックも大きく営業担当に具体的な評価を確認してもらったところ、詳しくは改めてといいながらも教えてくれたことがある。
「減点はなかった、加点が弱く票が流れた」
その話を聞いて週末に熱心に見たフィギュアスケートを思い出した。フィギュアの採点方式は大きく技術点と構成点に分かれているが、その特徴はエレメントと呼ばれる規定要素ごとに算出される。ジャンプで失敗して転倒しても実は大した減点にはならないのだ。逆に大きな加点を得るためには難易度の高い技を繰り出す必要がある。今回、僕の書いた企画書がポイントを得られなかったのはまさにそこだと感じている。技のインパクトが弱かったのだ。
仮に構成点として上げられている要素があったとすればそれは「マーケティング」「クリエイティブ」「システム」の要素であった。僕はそれぞれにおいて減点を防ぐためにオリエン時に求められた要因をきっちり返したつもりであった。しかし、それは「きっちり返しただけ」だったのかもしれない。どの要素に比重が置かれているかは個々の審査員によるであろうがため、あえてすべての要件をわかりやすく明快に解決策を提示した。ここに僕の「相手を知る」力が不足していた。
多様な部門から集められた審査員は「マーケティング」も「クリエイティブ」も「システム」も専門的に評価できるわけではない。少ないプレゼンの中で満遍なく説明されてもさほど強い印象を残すことはできないのだ。つまり審査員の心をつかむポイントが理解できていなかったのだ。
その企業のブランド力や製品力、営業力を総合的に考えることはもちろん重要だ。しかし、僕はその前段階であるに「コンペで受注すること」を少し蔑ろにしていたのかもしれない。
例えば、われわれ広告業界の人間はよく「クライアントのパートナーに」なるという。パートナーであるためには真剣な話し合いが必要であるし、相手にも自分にも強い思いを持って持ち続けることが大前提となる。しかし、ある一定規模の企業であった場合、こちらのパートナーを目指す重いとは裏腹に、1を聞いて10を知る勝手のいい存在であることを望む。手間と時間を買って、アイディアはサービスであるという少し古い慣習だ。しかし残念ながらそのような関係性を求める企業はまだまだたくさんある。
閑話休題。
今回のコンペにおいて、市場でのポジショニングも競合調査もシステムの便利さもクリエイティブの質の高さも、自分たちが思っているほど重要なエレメントではなかったのだ。今回はより強い具体性があることが勝負の分かれ目だったようだ。実際に受注した企業の提案内容について探りを入れてみたところ、マーケの話はほぼなく、システムも既存のものを採用した。その代わりクリエイティブ面で本領発揮しコンペにも関わらず下層部分を含むほとんどの画面をデザインし提出したという。
僕が提出したのはコンセプトが異なるTopページのデザイン×2案とシステムに関連するページのワイヤーフレーム。資料として不足はしていない。しかし全画面を準備したところと比べられると、手落ちとまでは言わないが本気度の違いが感じられるとは感じた。
企画書は必ず一人歩きする。全くプレゼンを聞いていない方が内容を見ても充分にワクワクして期待ができる内容であったかといえば僕の書いたものはそうは言い難かった。もちろんその仕事に対する思いは強く持ってはいたのだが、他社の具体的なそれに比べると薄っぺらく感じたのかもしれない。
今回の教訓をきちんと活かし、「試合に勝てる」方法論も身につけていくべきだと痛感した。
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