進行癌におかされ、左乳房の全摘手術を受けた閨秀歌人・富田美乃里。彼女との運命的な出会いを、森村誠一が、至高のラブロマンスに仕上げた、感動のドキュメンタリー・フィクション。 夭折の歌人、永遠の生命…。なにげなく渡された1冊の写真歌集が、作家の心を揺さぶり、そして、病床で、2人は出会った。運命の恋人・宮田美乃里の真実に迫る。
評価:★★★★★
壮絶である。
死と共生する日常がどんなものであるかは想像すらできない。
私たちは死という非日常をまさに「非日常」としか扱えないからである。
迫り来る最期のときに立ち向かうように自らの存在を歌に刻み続ける美乃里。
そしてその生き様を切り取っていく写真家と作家。
本作に描かれた作家と美乃里は命を賭すエネルギーの掛け合いに応じた。
女性として、歌人として、フラメンコダンサーとして、生き抜く姿に魅せられ
累代の恋人として、その人生に入り込んでいく作家の業がここにある。
ドキュメントであるとか、小説であるとかの域を超えて
読む者の心を鷲掴みにしていく。
軽くは読めない。だからこそ、読後の言い知れぬ感動は代えがたい。
自らの生き方を見つめ始めた、自分と同じ三十代に強く心に響くのではないだろうか。
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